週刊ダイヤモンド2022年3月19日号 にM&Aの特集が組まれていますが、中小企業でもM&Aが一般的になってきました。あるお客様には【3日に1通はM&Aのダイレクトメールが届く】と言われたこともありますし、銀行から営業を受けているケースも見受けられます。
実際に当事務所の関与先でもM&Aにより大企業のグループ法人になったケースが複数ありますが、それらの法人には後継者がいなかったという理由もあるでしょうが、老後の資金として創業者利益の最大化を検討した結果だったりします。
一般的に中小企業で親族に後継者候補がいない場合の選択肢は以下のとおりです。
①解散をして株主に残余財産の分配を行う。
②従業員に承継する。(株式の贈与や譲渡)
③M&Aにより会社を売却
以下の前提で具体的に問題点を考えてみます。
(前提)
・資本金1,000万円(現オーナーである創業社長が全額を出資)
・純資産額1億1,000万円(デューデリによる補正後の金額)
・償却前の営業利益が2,000万円程で安定している
・営業権の評価は償却前の営業利益の4倍とする(業種等により異なり、一般的には3~5倍)
①の方法を選択した場合には営業権(のれん)の8,000万円の利益を得ることができず、また、残余財産の分配を受ける金額のうち1億円について総合課税が適用されるため税引後の金額では6,000万円程しか残らないことになります。
②の方法を選択した場合には、事業承継税制の 特例措置を使って無税で従業員に株を贈与することは可能ですが、創業者利益はゼロになってしまいます。また、従業員に株式を譲渡しようと思っても会社の評価額が大きいと従業員が株式を取得するための資金が用意できない、営業権部分を低めに評価せざるを得ないといったことが想定されます。
③の方法を選択した場合には必ずしも一般的な算式による金額で売却できるとは限りませんが、デューデリ後の純資産額1億1,000万円+償却前の営業利益2,000万円×4倍の1億9,000万円を基準にして売却先を探すことになります。
また、手取額についても非上場株式の譲渡のため分離課税が適用され、利益に対して20.42%の税率で済み、仲介会社等の手数料の負担を考慮しても1億4,000万円程が残ることになります。
上記のとおり事業承継といっても方法により手取金額に8,000万円の差が生じることもありますので、親族に後継者がいない法人オーナー様につきましては、M&Aは有力な選択肢になります。当事務所では複数の上場している仲介会社と業務提携を行っていますし、デューデリの立会等についても十分な経験がありますので、仲介会社の選定やデューデリ対応についても適切なアドバイスが可能です。
事業承継でM&Aを検討することがありましたら当事務所までお気軽にご相談ください。