お知らせ
(速報)個人型確定拠出年金(iDeCo)の改正による影響
NISAは2024年から新制度が開始したことにより流行語大賞の候補にノミネートされるなど2024年は投資ブームが起きたと思います。NISAと同様に税制上の優遇があり、活用されている方が多い個人型確定拠出年金(iDeCo)について2025年度税制改正大綱で改正がありましたので、どう影響するかを考えたいと思います。
①掛金の限度額を引き上げ
企業年金がない会社員のiDeCoの掛金上限額は現在2万3,000円ですがこれを6万2,000円に、自営業などの場合は国民年金基金の掛金との合計額が6万8,000円でしたが7,000円引き上げて7万5,000円になります。年額にすると年間276,000円→744,000円、816,000円→900,000円と特に企業年金がない会社員の上限が大幅に引き上げられています。
iDeCoは、掛金全額を所得から控除することができるため、限度額が引き上げられたことにより積極的に節税を図ることが可能となります。特に課税所得の多い方は有力な節税対策として検討することをお勧めします。
②加入可能年齢の引き上げ
現在、公的年金に加入していることを条件として65歳までの方が加入可能となっていますが、これが70歳未満に引き上げられます。また、「iDeCoの加入者・指図者だった人」あるいは「私的年金の資産をiDeCoに移換できる人で、老齢基礎年金・iDeCoの老齢年金を受給していない人」であれば、そのまま60歳以降もiDeCoに加入できるようになります。
③退職所得控除の調整規定等の見直し
(前提)
会社員として22歳~65歳までの43年間働き、65歳で退職金として2,000万円が支給される。
30歳~60歳までの30年間はiDeCoに加入し月額30,000円を払い込み、60歳時に一時金で受け取る。(総額1,080万円の支払で受取時1,500万になるものとする。)
(改正前の場合)iDeCoの一時金を受け取りの際、退職所得控除が1,500万円受けられるため課税の対象は発生せずに、さらに65歳で受け取るの退職金についてもiDeCoの受け取りから5年超を経過していれば別枠で退職所得控除が使えるため、「退職所得控除の2重取り」が可能となり、結果的に退職金についても課税の対象は発生せず、結果的に3,500万円が無税で受け取れました。
(改正後の場合)同じ条件で改正後の場合には、iDeCoの一時金を受け取りの際の課税関係は変わらないのですが、退職金の受取の際に使えた退職所得控除の2重取りがiDeCoの受け取りから10年超を経過していないため使えず、20年×40万円+23年×70万円-(20年×40万円+10年×70万円)=910万円の控除となり、(2,000万円-910万円)×1/2=455万円が課税所得の対象となってしまいます。
では、この改正に対し、どう対応するのが良いかというと、退職金の受取時の年齢を65歳→70歳にずらすことが可能であれば従来どおり「退職所得控除の2重取り」が可能となります。会社役員であれば難しくないと思いますし、若い会社員の方であれば将来的には退職金の支給時の年齢が70歳になっている可能性もあります。もし退職金の支給年齢が65歳のままであれば、iDeCoを一時金と年金の両方で受け取ることにより、退職所得の対象となる金額を調整することも可能です。
また、掛金の限度額を引き上げに伴い、上限までの金額を長期間払い込むと受取時の課税所得が増加しますので、ご自身の退職金の見込額と退職所得控除の枠の金額からiDeCoの毎月の掛け金を決定するといった考え方もあると思います。