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空室がある場合の貸家建付地の相続税評価
相続税の土地評価の中でも、誤解が多く、実務でよく検討が必要になるのが「貸家建付地の評価における空室の扱い」です。
相続開始時点で空室があると、「貸家建付地として認められるのか?」「賃貸割合はどう計算すべきか?」と悩むケースは少なくありません。
「貸家建付地」とは、
他人に貸している建物の敷地となっている土地のこと。
財産評価基本通達では、自用地より評価額が下がる特例的な扱いが認められており、
相続税評価額を圧縮できる重要な論点です。
評価式は以下のとおりです:
貸家建付地価額=自用地価額×(1−借地権割合×借家権割合×賃貸割合)
ここでポイントになるのが 「賃貸割合」 です。
■ 空室があるときの賃貸割合はどうなる?
賃貸割合は「貸している部分の面積 ÷ 建物全体の面積」で計算しますが、空室があるときの扱いは次のように分類されます。
① 一時的な空室は “賃貸中” と扱ってよい(原則)
入居者が退去して、次の入居者を募集しているような「一時的な空室」は、賃貸割合に含めて良いとされています。
◎ 一時的な空室と認められる例
・不動産会社に入居者募集を依頼している
・募集の広告を出している
・ハウスクリーニング・軽微な修繕で一時的に空室
・次の契約が控えている
・直前まで入居していた
これらは賃貸経営では通常起こることなので、賃貸中として評価して差し支えありません。
② 長期空室や募集停止は「賃貸割合から除外」
注意が必要なのは、次のようなケースです。
× 賃貸割合に含めないケース
・長期間入居者がいない
・そもそも募集していない
・自用スペースとして使用している
・老朽化で居住不可になっている
・相続時点で「貸す意思のない部屋」
この場合、評価上は 空室部分を除外し、「賃貸割合=入居部分の面積のみ」で計算する必要があります。
ちなみに上記の「長期間入居者がいない」の「長期間」とは具体的にどれくらい?と疑問ですが明確な定義はないものの、過去の採決例等からすると「概ね1年以上」が一つのラインとして考えられます。
実務上は様々なケースがあり一概には言えませんが、空室であっても“賃貸意思があるか”“募集活動を行っているか”が重要なポイントとなります。